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浄瑠璃とオーケストラ、ふたつのクラシックが
大阪、いずみホールで出会う。『三井の晩鐘~
ソプラノ、浄瑠璃、室内アンサンブルのための』

 2014年1月31日(金)、いずみシンフォニエッタ大阪は第32回定期演奏会のプログラムとして、浄瑠璃とオーケストラの響きが独自の世界を形作る『三井の晩鐘~ソプラノ、浄瑠璃、室内アンサンブルのための』を取り上げる。この作品は2004年10月、イシハラホールの開館10周年記念として初演され、同年の第4回佐治敬三賞を受賞したもの。贈賞理由を伝える当時のプレスリリースには「大阪という都市の文化的蓄積についての深い理解があってはじめて実現した公演」という印象的な一文がある。大阪の伝統文化のひとつである浄瑠璃と競演したい、といういずみシンフォニエッタ大阪メンバーからの発案により、再演が実現したという。(当公演は指揮者が変更になりました。詳しくはこちらまで※1/30)


img02484_200.jpg 『三井の晩鐘』は滋賀・近江八景のひとつ三井寺の梵鐘にまつわる伝説をもとに、日本古代史などへの考察で知られる哲学者、梅原猛が創作した絵本を原作とする。アンサンブル部分を現代音楽の猿谷紀郎、浄瑠璃部分を人間国宝の鶴澤清治が作曲。西洋の古典音楽と日本の伝統芸能が響き合いながら、人間の漁師に嫁いだ龍の娘の幼いわが児との別れ、そして悲しい母親の情が語られてゆく。龍の娘の声はソプラノで歌われるが、言葉からは子音が省かれ、哀切な心情を表現する。今回の公演ではオーケストラはいずみホールに合わせて弦楽パートを拡大、三味線と浄瑠璃には初演と同じく鶴澤清治と豊竹呂勢太夫を迎える。

 「浄瑠璃、文楽というものは、上方、大阪を代表する文化であると同時に、日本におけるクラシックというものの今日のありようです。この日本のクラシックを継承する国立文楽劇場にほど近い距離に、西洋のクラシックのホールであるいずみホールが作られ、いずみシンフォニエッタ大阪という座付きオーケストラが存在するという現在の姿も、大阪という土地における文化伝統の何ごとかを語るものと言えるかも知れません」。公演に先立って行われた記者会見の席上、いずみシンフォニエッタ大阪音楽監督の作曲家・西村朗はこのように語った。長い歴史の中で新しい美や感性を育んできたふたつのクラシックが大阪という場所で出会うところに、何か新しい魅力がスパークするのではないか、そんな期待と憧れを込めた今回の再演であるという。なおこの第32回定期演奏会は「邦楽器との響演」と題し、前半には藤原道山の尺八により、いずみシンフォニエッタ大阪のプログラム・アドヴァイザーを務める作曲家・川島素晴の新作『尺八協奏曲』を演奏。コンサート全体の演出を「いずみホールオペラ」などを手掛けてきた岩田達宗が担当する。




《三井の晩鐘》記者会見より

DSC_1045_150.jpg■鶴澤清治(つるさわ・せいじ/作曲)
三味線というのは、とてもピッチの狂いやすい、不安定な楽器でございます。そして義太夫というのは、これは音楽というよりもなによりも“語り”です。私どもは常に大夫と1対1というかたちで演っておりますから、当日の大夫の調子、喉の具合などに合わせておりますと、どうしてもピッチが変わってくるんですね。ですから西洋楽器とのアンサンブルということで申しますと、そのあたりの緊張というのは常にあるんです。10年前、終演後に梅原(猛)先生が楽屋を訪ねて下さって、とても喜んでいただいたことなどをおぼえております。今回の再演でより良い演奏ができれば、と考えております。

 

 

DSC_1046_150.jpg■猿谷紀郎(さるや・としろう/作曲)
アメリカにいた時に、西洋音楽を学ぶ東洋人のアイデンティティについてよく質問を受けました。帰国してからも邦楽というのは日本人である私にとってルーツであることは間違いないのだけれど、何かしら遠いものだという意識が常にあったんです。そんな時にこの作品を手掛けることができ、私にとってはひとつの距離が縮まったような思いがいたしました。鶴澤先生の太棹の音の存在感というのは、自分にとってすさまじいものがあるんですね。この毛筆でぐわっと書かれたような音に太刀打ちしようとしても敵うものじゃない。当時、この音にどう向き合えばいいのかなどと考えていたことなどが思い出されます。初演の時は私が指揮をしたんですが、今回は飯森さんの指揮ですので作品を客観的に見ることができ、自分自身、何か新しい発見があるのではないかと思っています。

(2014年1月30日更新)


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いずみシンフォニエッタ大阪

いずみシンフォニエッタ大阪 第32回定期演奏会         《邦楽器との響演》

飯森範親(指揮)             鶴澤清治(三味線)


藤原道山(尺八)             豊竹呂勢大夫(浄瑠璃)


          天羽明恵(ソプラノ)(C)Akira Muto


川島素晴(作曲)             猿谷紀郎(作曲)


●2014年1月31日(金)19:00  いずみホール
Pコード 206-314  チケット発売中
一般-5000円(指定)  

川島素晴:尺八協奏曲(委嘱新作・初演)
     春の藤/夏の原/秋の道/冬の山
猿谷紀郎/鶴澤清治:三井の晩鐘
     ~ソプラノ、浄瑠璃、アンサンブルのための
【演出】岩田達宗
※18:30よりプレコンサート・18:45よりプレトークあり。

【問い合わせ】
いずみホールチケットセンター■06-6944-1188